国労高崎地本事件(最二小判平11・6・11) 出向先門前での出向反対宣伝活動に懲戒処分 制度実施を不当に妨げた
職場外でも労組の活動範囲を超える
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
JR東日本は、分割・民営化による余剰人員対策として社員を出向させたが、その出向先企業の工場前で出向反対の街頭宣伝活動をした国労組合員4名に対し、5日間の出勤停止の懲戒処分を行った。
地方労働委員会は、右懲戒処分を不当労働行為と認定して、右処分の取消し、右処分に伴う不利益の回復およびポスト・ノーティスを命じる救済命令を発した。
これに対し、行政訴訟の第一審判決は、右命令を適法としたが、第二審判決は、右命令を違法として取消した。本件は、その上告審である。
判決のポイント
上告補助参加人らによる本件行動は、被上告入の高崎運行部から相当数の従業員が初めて出向した時点において、出向先の富士重工株式会社(以下「富士重工」という)に少なからぬ不安動謡を与えて、富士重工の側から同様の行動が反復される場合には出向受け入れを再考したい旨の意向が被上告人に示されるなど、被上告人の当時の緊要な課題であった出向施策の円滑な実施等の業務運営を不当に妨げるおそれがあったものであって、その余の事情を考慮しても、労働組合の正当な活動の範囲内とはいえず、被上告人の就業規則所定の懲戒事由に当たるとした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして是認するに足り、その過程に所論の違法があるとはいえない。そうとすれば、原審の適法に確定した事実関係の下において、本件懲戒処分が不当労働行為に当たるとすることはできないとした原審の判断は、是認することができ、原判決に所論の違法はない。
応用と見直し
労働組合や労働者が…
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