日新火災海上保険事件(東京地判平11・1・22) 求人広告の記載と雇用契約の内容が違うと提訴 中途採用者の請求退ける
内定通知の段階で 給与等明示が賢明
筆者:弁護士 中山 慈夫(経営法曹会議)
事案の概要
本件は中途採用者Xの入社時の給与額等が争われた事案である。Xは、転職情報誌の求人広告を見て会社に応募し、平成3年12月25日に採用内定通知を得て平成4年1月に入社した。Xは入社時に新卒同年次定期採用者の平均給与を支給することが雇用契約の内容となっていたにもかかわらず、会社は平均的格付を下回る格付による基本給により給与を算定したとして、未払賃金・慰謝料等を請求し提訴したものである。
Xが新卒同年次定期採用者の平均給与を請求する根拠は、求人広告に新卒同年次定期採用者と同額の給与を支給するとの記載があったこと及び会社説明会で人事課長から同様の説明があったことの2つであった。
右求人広告には、「キャリアを活かした転職もよし」、「新卒としてやり直すもよし」、「住みなれた土地で落ちつくもよし」との大見出しのもとに、「◆たとえば、キャリアを活かした転職。業界経験、職種経験をフルに発揮して、もっと満足できる環境の中で能力を磨きたい。そんな方には、きっと納得していただけるような待遇を用意してお待ちしています。◆あるいは、第二新卒としてやり直してみたい方。89年、90年既卒者を対象として、もう一度新卒と同様に就職の機会を持っていただく制度があります。もちろんハンデはなし。たとえば89年卒の方なら、89年に当社に入社した社員の現時点での給与と同等の額をお約束いたします」と記載されていた。
判決のポイント
1、そもそも、求人広告は、…
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