櫟山交通事件(千葉地判平11・2・23) 会社を中傷するビラ配布した労組委員長を解雇 正当な批判、言論とはいえない

1999.10.25 【判決日:1999.02.23】
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内容、量、影響力 情状酌量等で判断

筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)

事案の概要

 タクシー事業を営む会社(有限会社櫟山交通・従業員数約220人、保有車両台数約90台)の従業員で組織する櫟山交通労働組合の執行委員長である甲は、会社のA乗務員が平成9年5月30日に、無免許運転で松戸警察署に逮捕されたことについて、同年6月10日頃、会社のタクシー業務の運行・労務管理体制が従前から運輸規則等の法規を遵守せず極めて杜撰である旨を指摘する組合ビラ(本件ビラ)を作成、会社の主要な営業区域を中心に数百枚配布した。

 甲は、ビラの記載内容は事実に反するものではなく適切な批判であり、乗客の「知る権利」にも奉仕する正当な言論活動であると主張した。

 会社は、甲に対し、平成9年6月16日、甲を同年7月20日付で解雇(本件解雇)する旨の意思表示をした。その際、会社代表取締役から甲に手渡された解雇通知書には、「甲は会社の名誉信用を毀損する言動を繰り返しており、会社従業員としての適格性を著しく欠くものである」と記載されている。

 甲は、普通解雇であっても、労働者を解雇するには、社会通念上相当と認められるだけの合理的理由を必要とするが、本件解雇はこれを欠いており無効であるとして本件訴えを提起した。

判決のポイント

 本件は、労働組合の執行委員長であった甲が労働組合活動として会社を中傷誹謗する本件ビラを配布したことを理由とする本件解雇の効力が争われたものである。…

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平成11年10月25日第2270号13面 掲載
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