塩野義製薬事件(大阪地判平11・7・28) 30年勤務した女性が男性との差額を請求 3000万円の支払い命じる ★
1999.11.01
【判決日:1999.07.28】
職種変更時に格差を是正する義務が
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
XはYに30年勤務し退職した女性従業員である。賃金に関する男女差別があったとして、同期入社、同職種の男性5名の賃金の平均額との差額および慰謝料の支払いを求めて提訴した。
Xは、昭和40年に大学薬学部を卒業してYに入社したが、入社当初の職務は補助職であり、適用される賃金テーブル(能力給区分)は区分11であった。その後Xは昭和54年に女性として初めての「製品担当者(製担)」となった。男性と同じ職種を同じ質・量で担当し、評価ランクも最高であったが、能力給区分は11のまま変更されなかった。他方、同職種の男性は、区分7であり、このため男性との間に賃金格差が生じることになった。その後、Xは男性の平均よりかなり遅れて課長待遇に昇進し、区分4となったが、格差が解消するにはいたらなかった。
判決のポイント
Yでは、大卒の新規雇用について、男性は全員を区分7にあたる基幹職のMR(病院回りの医薬情報担当者)としで採用し、女性については1、2名を除いて、区分11にあたる補助職として採用していた。この点について判決は、「男女を区別したものといわなければならないところである。ただ、MRという職種は、対外的に病院等を担当し、勤務時間も不規則となりがちで、また転勤もないではなく、相当に厳しい職種であったことが認められるところ、Xの採用についても、…
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平成11年11月1日第2271号13面 掲載