ニシデン事件(東京地判平11・3・16) 解雇した子会社社員から親会社に未払い賃金の請求 転籍とは認められない
雇用契約が存続し賃金支払いの義務
筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)
事案の概要
Y社は、香港の現地法人としてN社を設立し、N社は、シンガポールの現地法人としてS社を設立した。Y社は、平成9年4月7日、XをN社またはS社で勤務させる目的で採用した。そして、Xは、Y社よりゼネラル・マネージャーとしてN社に出向を命じられ、同月29日、香港のN社に赴任し、平成10年7月1日付けでシンガポールのS社に赴任して勤務していた。
Xは、同年9月10日付けでY社を解雇されたとして、Y社に対し、未払い賃金等の支払いを求めて提訴した。ただ、解雇の効力自体は争っていない。これに対し、Y社は、XがY社を退社し、N社を経てS社と雇用契約を締結し、S社で勤務してきたもので、S社より給与の支払いを受けており、すでにS社へ転籍していると主張し、Xが未払い賃金等の支払いを請求すべき相手方は、Y社ではなくS社であると争った。
その結果、本件では、まず、XのS社での勤務は、Y社より出向してのものか又は転籍してのものかが争点となった。次に、出向、転籍のいずれにせよ、Y社はXに対し、未払い賃金等の支払い義務を負うかが争われた。
判決のポイント
1 XがS社で勤務するに当たってY社との間で締結した雇用契約を合意解約したことを認めることはできない。したがって、XがY社に採用された後にS社で勤務していたのは、いわゆる出向に当たるというべきであり、いわゆる転籍に当たるということはできない。…
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