立川労基署長(東芝エンジニアリング)事件(東京地判平11・8・9) 出張中に事故死した社員の遺族が一時金を請求 業務遂行性欠き不支給
1999.12.13
【判決日:1999.08.09】
有志による送別会で飲酒後川で溺死
筆者:弁護士 中山 慈夫(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、事業主の命令により、発電所用制御盤の現地試験調整のため、長期出張中であったXが、同じ現場で働いていた他社の従業員の送別会に出席し飲酒して宿舎に帰った後、行方不明になり、4日後に近くの川で溺死しているのが発見された事故につき、遺族がXの死亡は業務に起因するものであると主張して、労働者災害補償保険法に基づき、遺族補償一時金及び葬祭料の支給を請求したが、所轄労働基準監督署長から支給しない旨の処分を受けたため、その取消しを裁判所に求めた事案である。
判決のポイント
1 労働者が出張中の場合には、特別の事情のない限り出張過程全般について使用者の支配下にあるものとして業務遂行性が認められるといえるが、本件においても、Xは、会社の業務出張指示書に基づき出張を命ぜられて出張先で業務に従事していたものであるから、約4カ月半継続して出張中の宿泊先として借りたドライブイン旅館の一室で起居していたからといって、広野発電所での行為以外のXの行為に業務遂行性が失われているということはできないというべきである。
ただし、出張中の行為であっても、積極的な私的行為等が行われた場合には、事業主の支配関係から脱したものとして業務遂行性は失われるといえる。…
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平成11年12月13日第2276号13面 掲載