淀川労基署長(大鉄工業)事件(大阪地判平9・4・21) 1日10時間労働を4カ月、結婚式場で突然死 因果関係なく労災不支給
業務内容が過酷・過重とはいえない
筆者:弁護士 開原 真弓(経営法曹会議)
事案の概要
本件の原告の夫であるXは、昭和49年5月に大鉄工業株式会社に入社し、軌道工として鉄道線路の道床交換、軌道整備及び材料交換に従事していた。また、作業グループの班長として他の従業員を指揮監督し、従業員を作業現場まで運ぶマイクロバスの運転もしていた。作業は、電車の通過しない時間帯にする必要があるため、夜間が主となっていた。Xの発症前4カ月の賃金台帳上の労働時間は、いずれの月も1労働日当たり平均10時間を超えていた。
昭和56年3月27日、北海道八雲町で行われた姪の結婚披露宴に出席し、突然自席の椅子で倒れ、急性心不全により死亡した。
原告は、Xの遺族(妻)として、昭和57年8月6日付けで被告に対し、遺族補償給付を請求したところ、被告は、原告に対し、昭和58年2月3日付けで、右死亡は業務上の事由によるものとは認められないとして、遺族補償給付を支給しない旨の決定をした。
原告は、右処分を不服として、労働者災害補償保険審査官に対し右処分の審査請求を、さらに労働保険審査会に再審査請求を行ったが、いずれも棄却の裁決がなされた。
判決のポイント
1、本件Xの心臓突然死の原因(死因)については、Xの生前のリスク・ファクター(危険因子)の状況を考慮しても、心筋梗塞(虚血性心疾患)であったとは、断定できない。
もっとも、確率的には、心筋梗塞を含む虚血性心疾患によるものである可能性が、他のいずれの疾病による可能性よりも高く、その割合は、50%であることが認められる。…
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