芙蓉ビジネスサービス事件(長野地松本支決平8・3・29) 反復更新してきた定期社員の雇止めは 4つの要件満たし有効
有期でも整理解雇の法理を類推適用
筆者:弁護士 加茂 善仁(経営法曹会議)
事案の概要
Y会社は、電機器具等の部品の加工等を目的とする会社であるが、Xは、昭和56年4月の採用直後から雇用期間を6カ月とし、期間満了の日をもって雇用契約は解除する旨の記載のある定期社員雇用契約書に署名・押印した。Xはこれを平成5年11月20日まで反覆した。Y会社は、平成6年4月20日、Xに対し、同年5月20日を以ってXとの雇用契約を終了する旨の意思表示をした。
Y会社は、平成3年から平成5年まで3期連続して赤字であり、合計7800万円の経常損失を出し、受注先からの発注も減少したことから、定期社員及び特別社員の採用を中止、55歳の定期社員については退職を勧奨し、さらに55歳未満の定期社員についても希望退職を募ることとし、平成5年11月10日に、同月20日に6カ月間の定期雇用契約は締結するが、同期間満了後の期間延長は確約できないとした上で、希望退職を申し出るよう促した。そして、Y会社はXらと雇用期間を平成6年5月20日までとする定期社員雇用契約を締結したが、希望退職を申し出る者は1人もいなかった。
そこで、Y会社は、平成5年定期社員に関する就業規則に12月20日頃、Xを含む4名の定期社員に対し関連会社への転籍を促したところ、2名はこれに応じ、1名は期間満了により退社することを承諾したが、Xはこれを拒否した。
Xは、本件定期雇用契約は、実質において期間の定のない雇用契約と異ならない状態で存在していたものであり、本件雇止めは解雇の意思表示であるから、整理解雇の4要件を具備しなければならないところ、本件雇止めはこの要件を欠き無効であると主張した。…
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