新日本通信事件(大阪地判平9・3・24) 勤務地は仙台の約束であったと、配転を拒否 勤務地限定の合意認める
本人の同意なく配転命令自体が無効
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
Y社(新日本通信株式会社)は電気通信事業、通信機器の販売及び施工・管理等を業とし、大阪に本社を置き、仙台支店をはじめ、全国に8カ所の支店がある。
労働者Xは、平成元年7月11日Y社仙台支店に正社員として雇用され、勤務した。
Y社は、平成元年10月9日、Xを解雇したが、Xがこれを不服として交渉した結果、Y社は同年11月8日付で解雇を撤回した。Y社は、平成元年12月16日、Xを新設された本社直轄のプロジェクト・リサーチ部仙台分室に配置転換した。プロジェクト・リサーチ部仙台分室は、平成2年9月1日Y社仙台支店外に事務所が移され、平成2年12月18日には、プロジェクト・リサーチ部仙台事務所と改称された。さらに、Y社は、平成5年4月21日付けで、右プロジェクト・リサーチ部仙台事務所が廃止されたことに伴い、Xに対し、大阪本社プロジェクト・リサーチ部への配置転換を命じた(以下「本件配転命令」という)。
Xは、これに対し、勤務地は仙台の約束であったとして、配転には応じられないとの態度をとったが、同年8月25日、異議をとどめたうえで本件配転命令に応じ、Y社大阪本社に赴任した。
Y社は、平成6年5月31日、Xに対し、自宅待機を命じ、同年8月31日付で退職するように勧告した。しかしながら、Xがこれに従わなかったため、Y社は、右5月31日、Xに対し、勤務成績不良を理由に、同年8月31日をもって解雇する旨の意思表示をした(以下「本件解雇」という)。
Xはこれを不服として、本訴を提起した。本判決は第一審の判決である。
判決のポイント
(一)本件配転命令が、…
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