愛知県教育委員会事件(名古屋地判平8・5・29) 定期健診の胸部X線受検拒否に減給処分? 職務上の義務なく違法に ★
就業規則等で義務 明記してあれば別
筆者:弁護士 開原 真弓(経営法曹会議)
事案の概要
愛知県碧南市の市立M中学に教諭として勤務していた原告Aは、定期健康診断の際のエックス線検査を受検しなかったため、校長は、再度実施されることになった胸部エックス線検査を受検するように命じたが、Aは、過去のエックス線暴露歴が多くこれ以上の暴露を避けたい旨の意思を表明して、この命令に従うことを拒否した。校長は、市の教育委員会とも相談の上、Aに対し、「大至急、公立病院等でエックス線撮影の検査を受けて下さい」と記載された文書を交付して受検を命じたが、Aはこの命令に従うことも拒否。
また、Aは、例年夏季に実施されていた職員の元気回復策としての夏季更生計画に参加するために、職務専念義務(地方公務員法35条)の免除申請を行った。校長は、これを不承認とし、どうしても休まなければならない事由があるならば、年休届を提出するように求めたが、Aは出勤しなかった。
愛知県教育委員会(本件被告)は、(1)Aが定期健康診断に係る胸部エックス線検査を受検しなかったこと、また、胸部エックス線検査を受検するよう命じた校長の職務命令を拒否したこと、(2)校長が職務専念義務の免除申請を不承認としたにもかかわらず、欠勤したことが、いずれも地方公務員法29条1項1号(法令違反)及び2号(職務上の義務違反)に該当するとして、給料及び調整手当の減給処分(以下「本件処分」という)を行った。これに対し、Aは、県教委の本件処分につき、愛知県人事委員会に対し不服申立てをしたが、同委員会は、県教委の本件処分を承認するとの判定をしたため、Aは、県教委の処分の取消を求めて本件訴えを提起したもの。…
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