国際協力事業団事件(東京地判平9・12・1) 雇用を反覆更新した者の年休日数の算定は? 継続勤務で繰越し認める
「継続」の判断は形式でなく実質で
筆者:弁護士 加茂 善仁(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、1年間の雇用契約を反覆更新している外国人労働者の年休取得日数が争われた事案である。X1は、昭和62年4月1日から翌年3月31日までの約定で語学講師としてYに雇用され、その後、毎年雇用期間1年の契約を締結し現在に至っている。また、X2は、平成3年7月8日から翌年3月31日までの約定で同じく語学講師としてYに雇用され、その後、毎年雇用期間1年の契約を更新したが、平成8年12月22日限りYを退職した。X1は、平成7年度に13日と半日の年休を取得し休業し、X2は12日の年休を取得して休業したところ、Yは、X1・X2のいずれもの年休日数は10日であるとして、X1については3日と半日を、X2については2日をそれぞれ欠勤扱いし、その分の賃金を控除した。
そこでX1及びX2は、10日を超える日数の年休による休業を欠勤扱いとして賃金を控除したのは違法であるとして、控除された賃金の支払いを求めるとともに、X1については、継続勤務を前提として計算された年休日数の年休権を有することの確認を求めて提訴した。
これに対し、Yは、①X1及びX2との雇用契約は、雇用期間を1年とし毎年度新たに締結されたものであり、年度を超えて継続雇用しているわけではないし、ましてや年休の翌年度への繰り越しなどあり得ない、②短期集中勤務をする事業の特殊性から、訓練期間の最中に年休を取得されると訓練に重大な支障が生ずるので、Yは、X1・X2ら語学講師に対しては訓練期間と訓練期間の間に長期の休暇を与える反面、訓練期間中は、原則として年休を与えない運用を行ってきたが、訓練期間と訓練期間の間の長期の休暇は年休の意味であり、これ以外に付与している10日の休暇は、訓練期間中のやむを得ない事由のため10日を限度として、いわばスペシャル・フェイバーとして特別に年休を付与しているものである、として争った。
判決のポイント
①X1は、…
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