日本交通・第十日本交通事件(東京地判平9・10・29) 特定業務を拒否する目的で年休権の行使は 権利濫用で許されない ★
正常な運営妨げるか否かで判断
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
被告である両タクシー会社は、深夜のタクシー需要の急増に応えるために導入された夜間専用車両を稼動させるため、平成2年7月16日からタクシー乗務員全員を対象に特別の勤務シフトを導入した。その勤務サイクルは、1カ月に13回乗務する月に、そのうちの1乗務をナイト乗務に当てて夜間の日勤勤務に従事するものである。
原告らが年次休暇の時季指定をしたところ、会社は、原告らの年休の時季指定日はいずれもナイト乗務に割り当てられた日であったとして、原告らの年休権行使に対して欠勤処理を行い、賃金及び一時金のカットをした。原告らはこの措置を違法であるとして、カット分の賃金支払いを会社に請求した。
判決のポイント
原告らの本件年休指定の当時は、日交労組はナイト乗務指定日の休暇闘争を中止する旨決定していたことや、右中止決定後は、組合員の多くがナイト乗務指定日に年次休暇の時季指定を行ったわけではなく、本件年休指定が日交労組の指示に基づくものと認めるに足りる証拠はないことからすると、本件年休指定は日交労組による休暇闘争であるとは認められないし、原告らが、それぞれ所属する各営業所における業務の正常な運営の阻害を目的として、本件年休指定を行ったとまでは認めがたい。したがって、前記各最高裁判決に照らしても、原告らの本件年休指定が本来の年次休暇権の行使とはいえないとする被告らの主張は採用できない。…
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