全日空事件(東京地決平9・5・28) 在宅起訴された従業員に無給休職の処分は? 要件欠き賃金請求権存続
1998.04.27
【判決日:1997.05.28】
公判出頭は年休取得で十分可能
筆者:弁護士 中山 慈夫(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、航空会社の機長であるXが傷害罪で刑事訴追を受けたため、会社により起訴休職に付され賃金の支払いを受けられなくなったところ、右無給休職の無効等を主張して、休職の効力の仮の停止と賃金の仮払いを求めた事案である。
Xは、平成8年4月、男女関係のもつれから職場外で女性従業員に対して傷害を負わせたという容疑で逮捕・起訴され、罰金10万円の略式命令を受けて釈放されたが、Xは略式命令に対して正式裁判の請求を行い、在宅のまま公判が行われていた。
会社はXに対し、略式起訴のあった翌日に乗務停止の措置をとり、その後刑事訴追を受けたことを理由に就業規則に基づき無給の休職とし、賃金を支払っていない。
そこで休職中のXが本件仮処分を申し立てた。
決定のポイント
従業員が起訴されたとしても、必ずしも労務の給付が不可能になるわけではなく、有罪判決が確定するまでは無罪の推定を受けるわけであるから、就業規則を理由に起訴されたXを自由に休職に付すことが出来るものではなく、これには合理的制約が存する。起訴休職が有効とされるためには次の①または②に該当し、さらに③を満たす必要がある。
①起訴された従業員が就労することにより、会社の対外的信用失墜のおそれがある場合、または職場秩序の維持に障害が生ずるおそれがある場合…
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平成10年4月27日第2198号12面 掲載