大森記念病院事件(東京地判平9・11・18) 記録紛失等を理由に婦長を平看護婦に降格 裁量判断を逸脱しムリ
1998.05.11
【判決日:1997.11.18】
業務上の必要性があるとはいえない
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
看護婦Xが、記録紛失等を理由に婦長から平看護婦に2段階降格した被告病院Yの措置を、違法・無効であると主張して、X自らの意思で退職した後に、Yに対して、債務不履行ないし不法行為を理由に、右退職時から定年退職時までの賃金相当額の逸失利益等の賠償を求める損害賠償請求事件である。
判決のポイント
1、本件降格は、被告において人事権の行使として行われたものと認められるところ、降格を含む人事権の行使は、基本的に使用者の経営上の裁量判断に属し、社会通念上著しく妥当性を欠き、権利の濫用にあたると認められない限り違法とはならないと解される。
使用者に委ねられた裁量判断を逸脱しているか否かを判断するにあたっては、使用者側における業務上・組織上の必要性の有無及びその程度、能力・適性の欠如等の労働者側における帰責性の有無及び程度、労働者の受ける不利益の性質及び程度、当該企業体における昇進・降格の運用状況等の事情を総合考慮すべきである。
2、婦長と平看護婦は待遇面では役付手当5万円がつくか否かにしか違いがないうえに、本件降格が予定表という重要書類の紛失を理由としていることなどに照らすと、被告が降格を行うとの判断をしたことは一応理解できなくはないけれども、一方、①本件降格が実施された直後に、原告が予定表を発見していることに照らすと、…
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平成10年5月11日第2200号12面 掲載