東谷山家事件(福岡地小倉支決平9・12・25) 頭髪を黄色に 服務規律違反で論旨解雇 制限の範囲を逸脱しダメ

1998.05.18 【判決日:1997.12.25】
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判断は客観的な業務阻害の度合いで

筆者:弁護士 畑 守人(経営法曹会議)

事案の概要

 債務者は、酒類の製造販売、一般貨物運送等を業とする株式会社で、債権者は債務者の正規社員として採用され、トラック運転手として働いてきた。

 債務者の専務・課長らは、債権者が頭髪を短めで派手な黄色の目立つ色に染めて出社してきたことから、取引先に悪い印象を与えかねないと懸念、3回にわたり債務者と面談して、髪を元の色に戻すよう求めたが、債権者はこれを拒否した。専務は債権者の態度は社内の秩序を乱すものと考え、債権者に髪の色を黒く染め、始末書を出すよう命じた。これに対し債権者は、少し茶色の残る程度に髪を黒く染め直したが、専務はほとんど変わっていないとして、明日仕事を休んで理髪店に行き黒く染めてくるよう、また始末書を書くよう命じた。債権者が、これ以上染める気はない、始末書は提出しないと返答したため、専務は債権者に対し、その場で諭旨解雇を通告した。

 債権者は、本件解雇は解雇権の濫用に当たり無効であると主張して、地位保全および賃金仮払いの仮処分を申請した。

決定のポイント

 1 一般に、企業は、企業内秩序を維持・確保するため、労働者の動静を把握する必要に迫られる場合のあることは当然であり、このような場合、企業としては労働者に必要な規制、指示、命令等を行うことが許されるというべきである。しかしながら、このようにいうことは、労働者が企業の一般的支配に服することを意味するものではなく、…

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平成10年5月18日第2201号12面 掲載
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