代々木ゼミナール事件(東京地判平10・3・25) 産前産後休業、育児時間を欠勤日数に算入 賞与対象者から除外は無効

1998.06.29 【判決日:1998.03.25】
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法の保障した利益失わせ公序に反す

筆者:弁護士 中山 慈夫(経営法曹会議)

事案の概要

 学園は、給与規程で賞与の支給要件として支給対象期間の出勤率が90%以上であることを必要と定め、その出勤率の算定にあたり、産前産後休業日数および勤務時間短縮措置による育児時間を欠勤日数に参入するとの取扱いをした。

 女性従業員である原告は、平成6年度年末賞与の支給対象期間中に産後休業を、平成7年度夏期賞与の支給対象期間中に勤務時間短縮措置による育児時間をそれぞれ取得したため、出勤率がいずれも90%に達しなかったので、学園は原告に対し、右各賞与を全く支給しなかった。そこで、この取扱いを不服とした原告が、学園に対して各賞与等を請求した。

判決のポイント

 本件90%条項の趣旨・目的は、従業員の出勤率を向上させ、貢献度を評価することにあり「もって従業員の高い出勤率を確保することを目的とするものであって、この趣旨・目的は一応の経済的合理性を有しているが、その本来的意義は、欠勤、遅刻、早退のように労働者の責めに帰すべき事由による出勤率の低下を防止することにあり、合理性の本体もここにあるものと解するのが相当である。産前産後休業の期間、勤務時間短縮措置による育児時間のように、法により権利、利益として保障されるものについては、労働者の責めに帰すべき事由による場合と同視することはできないから、90%条項を適用することにより、法が権利、利益として保障する趣旨を損なう場合には、これを損なう限度では90%条項の合理性を肯定することはできない。…

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平成10年6月29日第2206号12面 掲載
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