トーコロ事件(東京高判平9・11・17) 親睦団体役員が36協定締結の過半数代表者に 残業拒否者への解雇は無効 ★
過半数労働者の意思反映といえない
筆者:弁護士 畑 守人(経営法曹会議)
事案の概要
控訴人(被告)においては、親睦団体「友の会」役員が、自動的に労基法上の労働者の過半数代表者とされており、平成3年4月に所轄労基署に届出された36協定も「友の会」役員が署名・捺印して作成されていた。
被控訴人(原告)、は、平成3年7月、控訴人に途中入社し、電算写植機のオペレーターとして、住所録作成(組版)の業務に従事していたが、眼精疲労により長期間の残業は無理であるとして、繁忙期に午前0時頃まで残業する者がいたなかで、午後7時ないし7時半頃終業し、帰宅することが多かった。
控訴人は、業務に遅れが生じたためアルバイトを2名雇用し、残業でこれを乗り切ろうと、原告に対し、残業への協力を求めたが、同意は得られなかった。そこで上司は「来週1週間、午後9時まで残業をやりなさい。業務命令だ」と告げたところ、被控訴人は医師に受診し、「眼精疲労で当分の間、時間外労働を避けて通院加療が必要である」と記載された診断書を提出し、同日以降、定時の午後5時半になると終業し、帰宅した。
控訴人は、平成4年2月20日、被控訴人が残業命令を拒否したこと、職場の秩序を乱し、職場環境を悪化させたこと、人事考課を拒否し反抗的態度をとったこと、協調性が欠如していることなどが就業規則の懲戒解雇事由に当たるとして、普通解雇した。被控訴人は、本件解雇が無効であると主張して、雇用契約上の地位の確認並びに賃金及び慰謝料の支払いを請求した。
第一審の東京地裁は、平成6年10月25日、「友の会」の役員と締結した控訴人の「36協定」は無効であり、被控訴人に残業義務はなく、残業を拒否したこと、その他の解雇理由も懲戒解雇事由に当たらず、解雇は無効であると判示して、被控訴人の請求を認容した。控訴人は、これを不服として控訴したが、控訴審の東京高裁は、第一審と同様の理由で控訴を棄却した。
判決のポイント
いかなる場合に使用者の残業命令に対し労働者が…
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