東洋リース事件(東京地判平10・3・16) 暗黙に更新してきた短期雇用者の雇止めは? 解雇法理が類推適用される
継続期待に合理性あるか否かで判断
筆者:弁護士 加茂 善仁(経営法曹会議)
事案の概要
建設機械のリース等を業とするY会社の、独身寮の住み込み管理人兼賄婦として雇用されていたXは、平成3年5月に、定年年齢57歳となったとき、Y会社の社長から「長い間、ご苦労様でした。これは退職金です」といわれ、退職金名目で34万円余を支給され、受領した。その10日後、Y会社の担当者から本社へ呼び出され、従前と同様の仕事について、雇用期間は平成3年5月15日から平成4年5月14日までとすること及び「嘱託契約とし、1年ごとに契約を更改する」と定められた雇用契約書に署名押印した。
その後、XとY会社間において新たに雇用契約書を作成することはなかった。前記雇用契約書の期間経過後も、Xは従前と同様の業務に従事していたが、Y会社は、平成8年4月30日付書面で、Xに対し嘱託期間満了により雇用契約関係が終了する旨を通知し、同年5月15日以降のXの就労を拒み、賃金の支払いを停止した。
そこで、XはY会社に対し、①Y会社の就業規則中の定年退職の規定は、独身寮の管理人兼賄婦には適用がなく、XY間の雇用契約は有効に継続している、②仮に、Xが一旦定年退職したとしても、平成3年5月15日に締結された本件嘱託契約は、仕事の内容も従前と同様であり、昇給もしており、更新の手続もとられていないので、右嘱託契約は期間の定のない契約であるとして、雇用契約上の地位確認および賃金の支払いを求めた。
判決のポイント
Y会社が、当時からXについて就業規則16条の定年退職の規定の適用があると考えていたことは明白であり、またXにおいても定年退職扱いという趣旨を理解した上で、特段異議を述べることもなく退職金名目の金員を受領したものと認められる。そして、他にXについては右規定が適用されないと解すべき事情は窺えないから、Xは満57歳に達した翌日をもって、一旦退職したというべきである。…
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