JR東日本東京総合病院事件(東京地判平10・5・21) 執行委員長への配転命令は不当労働行為か? 弱体化が目的といえない
判断手法・基準で 裁判所と労委に差
筆者:弁護士 中山 慈夫(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、配転を不当労働行為と判断した中央労働委員会の救済命令が裁判所で取消された事例である。
会社の直営病院で視能訓練士として勤務し、組合分会の執行委員長であるXは、平成元年4月1日付けで病歴管理業務に配転を命じられた。組合は右配転命令が不当労働行為に当たるとして、東京都労働委員会に救済申立てを行った。都労委は右配転命令を不当労働行為と認定し、Xを視能訓練士の業務に復帰させることなどを命じた救済命令を出し、中労委も都労委の命令を維持する命令を発したため、会社がその取消しを求めて行政訴訟を提起した。
判決のポイント
一、会社は、民営化後の病院の一般開放により眼科の外来患者数の増加が見込まれ、将来視能訓練士を2名必要とする事態が生じる可能性等を考慮し、昭和61年4月1日付けでXに事務部総務課課員・視能訓練士兼務を命じ、従前同様視能訓練士の業務を行わせていたところ、病院の一般開放後も眼科の外来患者数に顕著な増加が見られず、視能訓練士1人当たりの外来患者数は、東京近郊の他の病院と比較して2分の1程度にとどまっていたことから、名実ともに視能訓練士の過員を解消することとし、その人選については、病院が慢性的な看護婦不足の状態にあることを考慮し、看護婦資格を有し、看護婦需要が逼迫した場合に視能訓練士から看護婦に置き換えることのできるAを眼科に残し、事務職の中でも視能訓練士として眼科に17年間勤務した経験があり、医療に関する基礎的な知識を有するXを病歴管理業務の専任者として配置したというのである。そうすると、本件配転命令には業務上の必要性があり、かつ、その人選についてもXが病歴管理業務の有資格者でない点からして必ずしも最適任であるとまではいえないとしても、事務職の中では医療に関する基礎的な知識を有することに照らせば、相当の妥当性が存するものというべきである。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら