システムコンサルタント事件(東京地判平10・3・19) 脳出血(過労死)による死亡で安全配慮義務違反に 免れない損害賠償責任 ★
過大負担認識の上過重な業務に配置
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
A(死亡時33歳)は、昭和54年にY会社に入社、システムエンジニア(SE)として働いていた。Aは入社時に境界域高血圧症が認められたが、日常的には健康で、自宅から約1時間30分かけてY会社に通勤していた。
Aは、平成元年5月、顧客から受注したコンピュータソフトの開発プロジェクトのリーダーに就任、その後進捗管理、要員管理、品質管理、関係者間調整など、多忙な業務を遂行、平成2年5月システム完成稼働後もサポート業務を継続していた。そうしたところ、Aは平成2年5月20日午後自宅において倒れ、直ちに救急搬送されたが、同日午後9時26分脳幹部出血(脳出血)により死亡した。そこで、Aの妻および両親は、Aの死はY会社の安全配慮義務違反によるものであるとして損害賠償を請求して、提訴した。
判決のポイント
第1点は、Aが脳出血で死亡したことがY会社において過重な業務に従事したことが原因であるといえるか(業務起因性、相当因果関係の有無)。第2点は、Y会社にAに過重業務をさせない等安全配慮義務を尽くさなかった債務不履行があるといえるか(債務不履行責任の有無)。
第1点について、本判決はこれを肯定した。
「Aは、年間総労働時間が平均3000時間を超える恒常的な長時間労働をしていたこと、プロジェクトにおけるAの業務は、高度の精神的な緊張を伴う過重なものであったこと、高血圧患者は血圧正常者に比較して精神的緊張等心理的ストレス負荷によって血圧が上昇しやすいことなどを考慮すると、Aの本態性高血圧は、長時間労働により、自然的経過を超えて急速に増悪していたところ、これに加えて、プロジェクトに関する高度の精神的緊張を伴う過重な業務により、さらに高血圧が増悪して、脳出血発症に至ったものであり、Aの業務と脳出血発症との間に、いわゆる事実的因果関係が肯定される。…
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