富山第一高等学校事件(富山地労委命令平10・7・13) 定年退職者への再雇用拒否は不当労働行為か? 慣行の形成といえずOK ★
再雇用するか否か明確な基準策定を
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
昭和34年5月に社会科担当の教諭として採用されたKは、労働組合の支部副執行委員長等の経験者であり、平成8年3月末に定年退職となった。また、昭和36年に国語科担当の教諭として採用されたTは、組合の支部副執行委員長の経験者であり、平成9年3月末に定年退職となった。
組合は、協定として労使双方を拘束する理事長回答及び再雇用に関する労使慣行からすれば、学校の定年退職者は本人が希望すれば再雇用されるべきであるのに、学校は理事長回答と労使慣行を無視して、両名の再雇用の要求を拒否したものであり、これは、両名が組合員であるがゆえの再雇用の拒否であって差別的取扱いであり、不当労働行為に該当すると主張し、救済申し立てを行った。
命令のポイント
理事長回答が労働協約ないしはこれに準ずる協定として当事者を拘束する文書であるとは認められない。
組合は、学校が長年にわたって学外定年退職者を雇用期限を7年ないし10年間として再雇用してきた事実の延長線上に学校の定年退職者も再雇用されるとする労使慣行が形成されてきたと主張する。確かに、学校が学外定年退職者を再雇用してきた事実はあるが、これは、学校が慢性的な教員不足を補う必要から開学当時から継続的に実施してきたものであって、学校の定年退職者の再雇用とは直接的な関係はなく、このような事実経過からでは当事者間に学校の定年退職者が退職後再雇用されるという規範意識が生じようがない。
したがって、学外定年退職者を長年再雇用してきた事実をもって、将来定年を迎える学校の教員が再雇用されるという慣行が形成されると解することはできない。…
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