ソニーマーケティング事件(大阪地判平10・4・27) 営業マンからセンター勤務への配転は契約違反か 職種限定の特約なく合法
著しい技術革新下限定には配慮必要
筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、大阪中央S販売株式会社(Y社の前身)が中途採用として募集した営業社員の求人広告により昭和47年3月1日付けで同社に入社し、浪速営業所に配属となり営業担当として勤務し、その後、7回にわたり異動したが、平成10年3月16日、Y社西日本商品情報センターへ同年4月1日から異動せよとの配置転換命令を受けた。
これに対しXは、ルートセールスの営業社員として中途入社したもので、労働契約において、特約店担当のルートセールスとの職種特約があったとして、Y社のした配転命令が労働契約違反ないし人事権の濫用に当たり無効であるから、「XがY社西日本商品情報センターに勤務する義務のない地位にあることを仮に定める」との地位保全の仮処分を裁判所に申請した。
判決のポイント
Y社の求人広告には「営業社員、S社特約店担当」との記載があったが、応募者資格として、学歴(高卒以上)、年齢(25歳まで)を除いて職務経験の有無を問うてはいなかったし(なお、募集広告は、契約申込の誘引にすぎないもので、その内容がそのまま労働契約の内容になるものではない)、Xが入社前に交付を受けていたY社の就業規則の規定(35条)およびXの入社後のY社内での異動状況等も併せて考慮すると、XとY社との間の労働契約にはXの主張するようなルートセールスに職種を限定するとの特約はなかったものと認められる。
応用と見直し
職種を限定して採用した場合とか、また採用後に職種を限定した場合は、一般に、その従業員の同意がなければ、職種を変更できないとされている。
医師、看護婦、ボイラーマンなどの特殊の技術、技能、資格を有する者については、職種の限定があるのが普通であろう(菅野和夫「労働法(第4版)」371頁)が、実務上は、採用時もしくは採用後に、…
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