東京キタイチ事件(札幌高判令2・4・15) 食品製造中のケガ治ったが復帰先ないと解雇に 「回避努力」を尽くさず無効
食品製造中にケガをした労働者に対し、治ゆ後も従前業務は困難で配置転換も拒否したとして解雇した。配転提案を解雇回避努力として評価した一審に対し、高裁は配転を拒否すれば解雇もある旨の説明がないなど努力を尽くしたとはいえず、治ゆの診断から2カ月後の解雇を無効とした。元従業員は、医師の「復帰の承諾」があったと申告しており、高裁は、会社は申告内容を医師に確認すべきとした。
治ゆして2カ月で 配転案は説明不足
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
控訴人(一審原告)は、被控訴人会社(一審被告)との間で期限の定めのない雇用契約を締結し、タラコの加工業務に従事していたところ、業務中に右手小指を負傷し、平成26年10月から休職した。複数回の手術を経て平成29年10月に症状固定し、同年12月に普通解雇された。控訴人は、①解雇は無効であるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、②復職可能な平成30年4月以降の賃金等の支払い、③被控訴人の安全配慮義務違反があったとして、不法行為または債務不履行に基づき、後遺障害慰謝料180万円と、解雇で復職を阻止されたことの慰謝料100万円等の支払いをそれぞれ求めた。
原審(札幌地判令元・9・26)は、本件解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でないものとは認められず、被控訴人に安全配慮義務違反は認められないとして、控訴人の請求を棄却したため、控訴人が控訴した。
判決のポイント
被控訴人としては、復職が可能であるとの主治医の判断を得ているとの申告を受けていたのであるから…本件診断書を作成した医師に問い合わせをするなどして、本件診断書の趣旨を確認すべきであった…。…そのような確認がされていれば…
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