地方公務員災害補償基金事件(横浜地判令2・2・19) 町役場の職員がうつ病を公務外とされ取消請求 「認定基準」当てはめて棄却
うつ病を発症してその後退職した町役場の職員(地方公務員)が、公務災害認定されず処分の取消しを求めた。横浜地裁は、災害補償基金の「認定基準」に沿うのが相当と判断。同基準で判断することで当事者から異議もなかった。業務自体は1年目で担当することがあるなど負荷は過重といえず、時間外勤務の時間数も基準におよそ達しないことなどから請求を棄却した。
残業時間達しない 過重な負荷を否定
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
甲は、平成18年4月に神奈川県のA町役場に採用された地方公務員であり、同24年4月から行政推進部総務課主事として選挙管理委員会、法令審査等に関する業務等に従事していた。
甲は、平成24年11月7日、上司に「仕事を続けていく自信がない」等と述べて退職の申出をしたが、同申出を撤回した。その後、甲は同月14日午前中に仕事を休み(心療内科を受診し、うつ病の診断書を取得)、午後に出勤したものの、翌15日の1日と16日午前中に仕事を休んだ。その後甲は出勤を継続したものの、同年12月11日の勤務時間中に所在不明となり、同月24日、同日付のうつ病の診断書を取得した。その後、甲は平成25年6月11日にA町役場を退職した。
甲は、うつ病が公務に起因するとして、平成27年2月25日付で、地方公務員災害補償法に基づき、公務災害認定請求を行ったが、同28年9月20日付で公務外認定処分がなされ、その後の審査請求も棄却されたため、同処分の取消しを求めて提訴したものである。
本件の争点は、甲のうつ病の発症について公務起因性が認められるか否かである。
判決のポイント
(1)公務起因性の判断枠組み
地方公務員災害補償法に基づく補償について、…
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