賃金等請求控訴事件(東京高判令2・9・3) 劇団員の活動は労務提供、賃金命じた一審は? 公演出演も労働時間に該当
2021.02.11
【判決日:2020.09.03】
劇団員の大道具作成などは労務の提供に当たるとして、一部賃金の支払いを命じた事案の控訴審。公演の出演を「任意」とした一審に対し、東京高裁は、出演の諾否の自由があったとはいえず、指揮命令下の業務であり労働時間とした。出演を断ることは考え難く、仮に断っても劇団の他の業務へ従事するためとしている。長時間労働を強いられたとの主張は斥けた。
“諾否の自由”なし 指揮命令下と判断
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、被控訴人の下で劇団員として活動していた控訴人が、被控訴人に対し、(1)法定労働時間に対する最低賃金法による賃金および時間外労働に対する法定の割増率による割増賃金について未払いがあるとして、残余の賃金請求をなし、さらに(2)長時間労働を強いられたうえ、劇団幹部らから暴言、脅迫を受けたなどとして、不法行為に基づく損害賠償請求として慰謝料をそれぞれ求めた事案である。
原審(東京地判令元・9・4)は、公演への出演は任意であり、労務の提供とはいえないものの、大道具、小道具および音響照明業務等並びに被控訴人が経営するカフェにおける業務は、労務の提供に当たるとして、その実労働時間およびそれに伴う割増賃金を算定し、未払賃金等の請求を認容したが、(2)については理由がないとして、これを棄却した。
判決のポイント
(1)被控訴人は、本件カフェにおける業務を除き、本件劇団における業務について、…
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令和3年2月15日第3293号14面 掲載