損害賠償請求事件(大阪地裁堺支判令2・7・2) 国籍を誹謗中傷する文書配布され違法と訴える “差別受けるおそれ”に賠償
社内の配布文書で国籍を誹謗中傷されたとして、会社らに損害賠償を求めた。会社は教育の一環としていた。裁判所は、差別的取扱いを受けるのではないかとおそれを抱いて然るべきと判断、また文書の配布態様から人格的利益の侵害とした。文書の内容は著しい侮辱と感じられ名誉感情を害するもので、かつ、反復継続して大量に配布し、口頭で自由に意見することも困難だった。
人格的な利益侵害 意見するのも困難
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
原告は、被告会社の従業員(外国国籍を有する者)である。
平成25年2月15日~27年9月28日までの間、被告会社は、役員や従業員に対して、教育の一環と称して、外交問題等を主題として、特定の国家や政府関係者を強く批判したり、在日を含む国籍や民族的出自を有する者に対して「死ねよ」「嘘つき」「卑劣」「野生動物」などと激しい人格攻撃の文言を用いて侮辱したり、日本国籍や民族的出自を有する者を賛美して優越性を述べたりするなどの政治的な意見や論評の表明を記載した文書を配布した(以下「本件配布」、この配布に係る文書を「本件文書」)。
また、原告の上司であるC副本部長は、原告を含む設計監理課の従業員に対し、「経営理念感想文(被告会社の従業員の感想文で本件文書の内容に賛同するもの)を必ずご家族の方に読んで頂く件」「今後、設計監理課では、経営理念感想文を必ず2部配布させて頂きますので、1部はご家族用として、ご家族の方へ必ず渡して下さい」と記載した文書を配布するなどしたが、被告会社は、従業員に対し、文書の閲読等を指示しておらず閲読の有無を確認することもしていなかった。
原告は、本件配布が労働契約上保護される原告の権利または法益を侵害し違法であると主張して訴訟提起した。
判決のポイント
① 私的支配関係である労働契約において、…
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