レックス事件(東京地決平6・5・25) 企業解散の自由と労働者の解雇問題 組合潰滅目的は正義に反す
1996.01.29
【判決日:1994.05.25】
回避の努力と従業員への説得が肝要
筆者:弁護士 開原 真弓(経営法曹会議)
事案の概要
株式会社Y社は、資本金500万円、従業員12名の会社で、カー・オーディオ製品の試作を受注していたが、大口取引先からの受注量が減少、売上高が半減したため、関連会社の吸収合併や人員整理等の施策を講じようとしたが、労働者の理解が得られず、事業を廃止することになり、解散決議を経て、全従業員に対し退職金を支給した。
これに対して従業員の一人Xが、偽装解散、解雇権の濫用を理由に雇用契約上の権利を有する地位を仮に定める仮処分を申請した。
決定のポイント
Y社は、経営状況の悪化のため、解散を余儀なくされるに至り、従業員全員を解雇しなければならなくなったものであり、右解散が偽装であるとの事実を窺うことはできないから、右解雇は、やむを得ないものといわざるを得ない。本件解雇が合理性・相当性を欠き、解雇権の濫用を疎明するに足る資料もないから、本件解雇は有効である。
被保全権利について疎明なしとして申し立てを却下したが、偽装解散あるいは不当労働行為意思を解散の決定的動機とする場合は解雇は無効とする考え方、が窺われるので憲法22条(職業選択の自由)と憲法25条(生存権)、憲法28条(労働三権)との整合性をどのように理解すべきかという視点に立って検討すべき事案である。…
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平成8年1月29日第2090号10面 掲載