国民金融公庫事件(東京地判平7・9・25) 「業務役」は労基法41条2号の管理者か 経営者と一体的立場なら
スタッフ職の取り扱いには注意必要
筆者:弁護士 畑 守人(経営法曹会議)
事案の概要
被告は、国民金融公庫法により設立された特殊法人であり、原告は、千住支店総務課に属し、同課において総務課長に次ぐ業務役ないし上席業務役の地位にあった。
被告においては、業務役を含め職員の出退勤管理は出勤簿及び年休簿によっており、始業時刻までに出勤したか否か、年休取得の有無等は右により把握されていた。一般職員に対する時間外勤務の命令は、担当課長がその必要性を判断して支店長に具申し、支店長が超過勤務命令書により対象者と時間を特定して命令を出していたが、総務課契約係の職員に関しては、総務課長と原告が相談した上で、右の具申を行っていた。
なお、被告においては、従前、業務役の地位にある従業員については、労働基準法41条2号の管理・監督者に該当するとして、時間外労働に対する時間外勤務手当を支給していなかったが、平成5年3月頃、労働基準監督署から業務役についても時間外勤務手当を支給すべき旨の指導が行われ、以後、業務役についても時間外勤務手当を支給するようになった。
原告は、被告に在職していた平成3年5月から定年退職した同4年7月までの間、合計280時間の時間外労働をしたとして、時間外勤務手当を請求して本訴に及んだが、東京地裁は、合計55時間の時間外労働を認め、被告に対しその分の時間外勤務手当の支払いを命じた。
判決のポイント
被告における業務役の地位は本来の管理職の系列には属さない補佐的な役割を有するにとどまり、原告の場合も、総務課長の権限の一部として検印業務等を行っていたものであるが、労務管理に関する具体的な権限としては、…
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