共同サービス事件(東京地判平7・7・17) 下請専属契約に基づく業者の労働者性 実態から労働者と認定
実質的な使用従属関係の存否で判断
筆者:弁護士 加茂 善仁(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、平成2年6月14日以降、Y会社と下請専属契約を締結し、上下水道の配管等の修理等の業務に従事した。Y会社は下請専属契約書にもとづき、毎月Xに支払う報酬から損害の発生に備えて一定額を控除し、これを積み立てており、その総額は、金100万円に達していた。その後、XはY会社との本件契約を合意解約し、Y会社に対し右積立金の返還を請求、XとY会社との本件契約は労働契約でありXは労働者であるので、本件契約による積立金は労基法24条に反すると主張した。
Y会社は、Xは、独立事業者であって本件契約に労基法の適用はなく、また、XはY会社所有の車両の修理費用を負担すべきであり、右修理費用を積立金から相殺すると主張した。さらに、Xが本件契約を合意解約した後、本件契約に違反してY会社と競合関係にある会社に入社し、本件契約中に知り得たY会社の取引先と同種の契約を締結したため、Y会社は少なくとも1年間、右取引先と契約できず、これにより損害を被ったので、Xの請求と対等額で相殺する旨主張した。
判決のポイント
Xは、平成2年6月14日、被告会社に入社し以後、給排水配管等の修理工事に専属的に従事した。Xは、右修理工事については殆ど未経験であったので、入社当日から同月30日までの見習い期間中に、他の作業員の仕事を手伝い仕事内容を覚えた。
Y会社は、夜勤を含む交代勤務制をとっており、1カ月前に勤務表を作成してXに提示し勤務時間を指示していた。Xが事前に申し出れば勤務時間の変更は可能であったが、変更後の勤務時間には拘束された。XはY会社事務所に必ず出勤するわけではないものの、Y会社から貸与されている車に無線機がついており、勤務開始時間になればY会社に連絡して指示を仰ぎ、その指示に従って仕事先に直行し、仕事が終了すると会社に報告し、次の指示を受けていた。Xが作業に使用する圧縮ポンプ等の道具類や車両はY会社の所有物であってXが貸与を受けていた。作業材料は、被告会社の契約している材料店で仕入れることになっていて、他の店で購入することはできず、その材料費はY会社が支払った。
これによれば、…
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