津田電気計器事件(大阪地決平7・12・20) 妥結していない一時金の支払請求権は “仮払いの慣行”を認める
非組合員等には最終回答で支給
筆者:弁護士 加茂 善仁(経営法曹会議)
事案の概要
XらはY会社の従業員で、Z組合の組合員である。Z組はY会社に、平成6年夏期一時金として3カ月プラス10万円を要求、Y会社は、最終的に2カ月及び右月数で算定した額に不就労時間を控除した実労働時間を基準とする係数を乗じて算出した額を支給すると回答したが、妥結に至らず係争中であった。また、Z組合は同年冬期一時金として3.3カ月を要求、Y会社は最終的に2.2カ月プラス5000円を回答しているが、これも妥結に至らず係争中であった。なお、Y会社は、Xら以外の従業員に対しては、Y会社の回答どおりに、夏・冬の一時金を支給している。
XらはY会社に対し、一時金については協定が成立しないなど妥結をみなくとも、Y会社はZ組合の要求があればXら組合員に対し、Y会社の回答額で支払いをするという労使慣行(仮払い慣行)があるとし、右慣行にもとづきY会社の回答した夏期・冬期一時金の支払いを求めた。これに対しY会社は、仮払いの慣行はなく、妥結すれば支払いがなされるとして争った。
決定のポイント
労使の慣行が、法規範として効力を有するためには、単にその慣行が反復継続されていることのみでなく、労使双方が、その労使慣行に拘束されるとの規範意識を有するに至っていることが必要であり、本件のごとく一時金の支払いに関する場合には、請求権発生の根拠となるべきものであるから、その支払時期や支払額等について、一義的に定められる内容を有するものであることが不可欠である。
Y会社は、昭和61年の夏期・冬期一時金について…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら