三和機材事件(東京地判平7・12・25) 分社化に伴う出向拒否と解雇の効力 転籍には個別同意が必要
整理解雇の要件に準拠して判断
筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)
事案の概要
Y社は、昭和50年以降、業績低迷が続いたうえ、取引先が破産したため手形の決裁不能に陥って倒産、再建のため東京地方裁判所に対し和議手続開始の申立をし、昭和62年2月25日、同裁判所より和議を認可の決定を受けた。その後、再建を進めるなかで、営業部門の独立・分社化を検討し、平成3年1月14日の取締役会で、販売会社を設立して営業部門の業務を移管し営業部所属の43名全員を新会社に転籍させることを決定した。ところでY社の就業規則では、出向は出向規程に基づき行う旨の規定はあるが、その出向規程が存在しなかったため、業務移管に先立ち、転籍を含む出向についての取扱いを定める出向規程を制定した。
そして、Y社は、同年5月9日、従業員に対し、営業部門を分離し新会社を設立したこと、それに伴い営業部に勤務する従業員全員を新会社へ転籍させる旨を発表したところ、業務移管時までにXを除く全員が同意したが、Xだけが同意しなかった。
そのためY社は、Xに対し新会社への転籍に応じるように説得したが、応じなかったので、同年7月3日、転籍命令を出した。しかし、Xがこれを拒否したため、Y社はXに対し、同月5日、新会社への転籍を拒否したことを理由として解雇した。
これに対し、Xは、東京地方裁判所に解雇が無効だとして社員たる地位にあることの確認などを求める訴訟を提起した。
判決のポイント
本件就業規則変更の必要性についてみると、…
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