時事通信社事件(東京高判平7・11・16) 約1カ月の年休に対する時季変更は? 使用者に裁量の幅認める ★
長期・連続休暇は支障来す確率が大
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
被控訴人は、ニュースの提供を主たる業務目的とする会社であり、控訴人は、本社第一編集局社会部の記者として、昭和53年4月から科学技術庁の科学技術記者クラブに所属していた。控訴人は、昭和55年6月23日、社会部長に対し、口頭で、8月20日ころから約1力月くらいの有給休暇をとって欧州の原子力発電問題を取材したいと申し入れ、6月30日に、8月20日から9月20日までの休暇及び欠勤届を提出した。
社会部長は、科学技術記者クラブの常駐記者は1人だけであって1カ月も専門記者が不在では取材報道に支障を来すおそれがあり、代替記者を配置する人員の余裕もないとして、2週間ずつ2回に分けて休暇をとってほしいと回答したうえ、7月16日付で、8月20日から9月3日までの休暇は認めるが、9月4日から20日までの期間の勤務日については、時季変更権を行使した。
控訴人は、8月22日から9月20日まで欧州旅行に行き勤務に就かなかったので、被控訴人は、業務命令に反して就業しなかったとして控訴人をけん責処分に処し、その欠勤を理由として賞与を4万7638円少なく支給した。
判決のポイント
年次有給休暇の権利は、労働基準法39条1、2項の要件の充足により法律上当然に生じ、労働者がその有する年次有給休暇の日数の範囲内で始期と終期を特定して休暇の時季指定をしたときは、使用者が適法な時季変更権を行使しない限り、…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら