新日本製鐵事件(福岡地小倉支判平8・3・26) 入社時の包括的同意で長期出向は可能か 個別、具体的同意が必要 ★

1996.07.29 【判決日:1996.03.26】
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労働条件、人選等合理的ならOKも

筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)

事案の概要

 Y社では、昭和61年、円高不況対策として中期総合計画を立案し、Y事業所での鉄道輸送部門をN運輸に業務委託することになったが、右委託に伴い大幅な人員の余力が生じ、同事業所内で余剰を吸収することにも限界があるため、従業員の雇用確保の見地からN運輸への出向措置を講ずることにした。

 そこで、Y社は、Y労組とも折衝を重ね、Y労組からY社の案を了承する旨の表明があったので、生産業務部輸送管理室輸送掛のXを含む出向者を人選したが、Xは、出向に同意しなかった。そのため、Y社はXに対し、同年4月14日、同月15日付にてN運輸への出向を命令した。

 これに対し、Xは、同月17日、出向に不同意のままN運輸へ赴任したが、福岡地裁小倉支部へ右出向命令は無効であるとの確認などを求めて提訴した。

 なお、Y社の就業規則には「社員に対しては、業務上の必要により社外勤務させることがある」との規定があるほか、Y労組の組合員に適用される労働協約においても「会社は、業務上の必要により、組合員を社外勤務させることがある」との規定がある。また、Y社とY労組の上部団体が締結した労働組合法上の労働協約である社外勤務協定には、出向する組合員は社外勤務休職とする」、「この休職期間は当社の勤続年数に通算する」との規定がある。

判決のポイント

 1 Xの入社時の就業規則には、業務上の必要により従業員を社外勤務させることがある旨規定されており、Xは、この就業規則を遵守する旨の誓約書を提出し、入社時に就業規則についての一応の説明を受けたことが認められるから、出向を含む社外勤務を命じられることがあることは、労働契約の内容として含まれていたものということができる。

 2 ただ、Y社における出向事例の推移をみれば、…

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平成8年7月29日第2114号10面 掲載
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