ベネッセコーポレーション事件(東京地判平8・6・28) 年内退職者への冬季賞与を8割カット 労基法、民法90条に違反
将来に対する期待部分は2割が限度
筆者:弁護士 中山 慈夫(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、会社が従業員Aに支払った冬季賞与が過払いであるとして、Aに対して約106万円の不当利得返還請求をした事案である。
会社の給与規定では冬期賞与について、賞与支給対象期間―当年5月1日から10月31日まで、支給対象者―支給対象期間末日に在籍しかつ勤続1力月以上の従業員、その他賞与の支給に関する事項については支給基準書で定めるとあり、
平成4年度冬季賞与については、支給基準書で、
<支給日>
平成4年12月14日
<支給額>
① 平成3年11月1日から平成4年9月1日までに入社した従業員には基礎額(基本給+等級手当)の4カ月分
② 但し平成4年4月1日以降に入社した従業員で、同年12月31日までの退職予定者については4万円に在籍月数を乗じた額とする
と定めていた。
②に該当すると、賞与額は①に比べ非常に低額となる。
会社は、平成4年4月1日に入社したAに対し、①により算出した162万2800円から税額を控除した106万7329円を12月14日に支給したが、Aは翌15日に自己都合で退職届を提出し、16日に退職した。
そこで会社は、Aは年内退職予定者に該当し、その賞与額は②で算出した28万円なので、支給済の106万7329円は全額過払いであるとしてAに返還を求めた。
判決のポイント
1 Aのような平成4年4月以降の入社者の賞与については、…
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