JR東日本<本荘保線区>事件(最判平8・2・23) 就業規則違反者に懲罰的教育訓練を命令 “裁量”逸脱した不法行為に
訓練の目的、内容、方法などから判断
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、A鉄道会社秋田支店本荘保線区の施設係として働く現場労働者であり、また、Y労働組合秋田地本本荘保線区分会にも属する組合員である。
Xは、昭和63年5月11日午後2時すぎ、羽越本線出戸駅構内において、バックルにY労働組合のマークの入っているベルトを身につけながら作業に従事していたところ、A会社の本荘保線区の区長であったBはこれを見つけ、就業規則違反を理由に本件ベルトの取り外しを命じたが、Xはこれに従わなかったため、翌日Bの所まで出頭するよう命じた。
翌日、BはXに対し、教育訓練と称し、午前8時30分すぎより午後4時すぎまで他の職員のいる事務室において就業規則全文を書き写すこと、その後感想文を書くこと、書き写した就業規則を読み上げることを指示した。そして、Xが手を休めたりしていると、早く書くよう怒鳴ったり、机を足で蹴ったり、また、他の職員がお茶を出そうとするのを止めさせるなどXが湯茶を飲むのを許さなかった。昼の休憩時間終了後、間もなく便意を催したXが用便に行かせるよう求めてもBはこれを容易に認めなかった。次の日も、BはXに対して同様の教育訓練を命じたところ、Xはまもなく腹痛を訴え、病院に行かせて欲しい旨述べたが、Bはなかなか許可を出さなかった。しかし、しばらくたって、Xが自分は胃潰瘍等の病歴があることを伝えると、ようやく許可を出した。そして、近くの病院に行って診察をうけたところ、医師より入院を宣告され、1週間の入院を要することとなった。
そこでXはBによる右の一連の教育訓練は、正当な業務命令の裁量の範囲を逸脱しており、民法709条の不法行為にあたると主張し、Bに対して、損害の賠償を求め、A社に対しては民法715条の使用者責任に基づく損害の賠償を求めて、連帯して100万円を支払うよう訴えを起こした。
判決のポイント
本件事件の主要な争点は、…
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