西日本ジェイアールバス事件(金沢地判平8・4・18) 恒常的要員不足の下で時季変更権を行使 年休権行使の侵害に当たる ★
代替要員の確保が困難な状態に問題
筆者:弁護士 畑 守人(経営法曹会議)
事案の概要
原告は、西日本旅客鉄道株式会社から分離設立されたバスによる旅客運送等を業とする被告会社の金沢営業所に、バスの運転係として勤務、昭和63年度には新規付与分と繰り越し分との計28日分の年休を取得する権利を、平成元年度には合計38日分の年休を取得する権利を有していた。
金沢営業所の運転係は、定期路線バス、貸切バス等の運行を担当しているが、要員の不足が常態化していた。しかし被告は営業上の必要から、業務の受注については人員の状況等を特に勘案することなくこれを引き受け、時季指定された日に通常の人員配置のままでは労働者が年休を取得できないことがあらかじめ明らかな場合であっても、代替要員を確保して労働者に時季指定の日に年休を取得させようとする努力は一切せず、漫然と時季変更権を行使していた。
そして、被告は、原告が昭和63年及び平成元年度に時季指定した年休についても、年休日を祝日の代休として指定したり、勤務指定表に従った勤務を指示して就労させたりした。
原告は、合計41日分の年休の行使が妨害されたうえ、7日分の年休を取得する権利を失効させられたことが被告の債務不履行もしくは不法行為であるとして、これによって被った精神的損害に対する慰藉料金30万円を」耐求したのが本件である。金沢地裁は、被告に対し慰藉料金25万円の支払いを命じた。
判決のポイント
1、労働基準法39条の趣旨に照らせば、…
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