佐世保重工業事件(東京地判平8・7・2) 取締役の就任阻止図った幹部を解雇 経営権侵害で懲戒は有効

1996.11.11 【判決日:1996.07.02】
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企業秩序を破壊し社会的相当性欠く

筆者:弁護士 開原 真弓(経営法曹会議)

事案の概要

 取締役人事に関し特定役員の就任阻止を目的として行われた幹部職員ら労働者の行動が「会社の経営人事権に不当に介入し経営権を侵害する」ものとして懲戒解雇を有効とし、解雇者からの退職金請求を棄却した事案で概要は次のとおりである。

 企業再建者として名高いT社長が抜擢したA取締役が、人員削減策などの合理化を敢行し、その結果一応の成果を挙げたが、その後のドル安、海運不況などの影響からT、A共に失脚した。Tに替わった次の経営者も失敗し、その後の経営者がAを再び要職に就任させ実権を与えようとしたところ、幹部労働者の一部である原告らはAと対立していた取締役Bら一部管理職(不正伝票により裏金を取得したり、右翼暴力団と深く関与していたためAが実権を持つことに不安を抱いていた)に加担し、新経営陣を失権させる目的でこれを攻撃する「趣意書」を起草し、その発起人となり、グループ会合を主催して謀議を重ねた。これに対し新経営陣は、その行動は、秩序を破壊し、対外的にも会社の名誉、信用を著しく毀損したとして幹部労働者を懲戒解雇とした。

 幹部労働者は会社の将来を心配して行ったもので、労働者が経営人事権に介入することが許される範囲のもので解雇権の濫用であるとして退職金及び懲戒解雇による精神的損害の慰謝料を請求した。

判決のポイント

 原告らの一連の行動は会社の経営人事権に不当に介入し、…

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平成8年11月11日第2128号10面 掲載
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