ロイヤル・インシュアランス・パブリック・リミテッドカンパニー事件(東京地決平8・7・31) 労働組合の了承ない整理解雇の効力は 手続要件欠き無効と判断 ★
絶対的要件ではないことに留意を!
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
保険業務及びその関連業務を目的とするロイヤル・インシュアランス・パブリック・リミテッドカンパニー日本支店は、経営状況の悪化から組織の見直しを迫られ、見直しプロジェクトを設置し、その最終報告を基に組織を簡素でフラットなものに改革した。この新体制への移行に伴い業務統括部長、マーケテイング部長のポストが消滅、その職にあったAらに割り当てる職種がなくなった。このため、会社は平成7年9月、Aらに自宅待機を命じた上、新体制のスタートした同11月、Aらの部長職を解き、平成8年3月にAらを解雇した。
会社はこの間、Aらの立場を十分尊重し、長期の猶予期間を設けて自発的退職を求め、十分な退職条件を提示して再就職の斡旋をし、また、Aらに対して退職を求めざるを得ない理由につき、繰り返し説明・説得に努めた。
これに対しAらは、会社の就業規則の「退職および解雇規定」2条(5)が規定している解雇の手続要件「労働組合の了承」を得ていないとしてこれを争い、本件(仮処分)を提訴した。
決定のポイント
「解雇の手続要件として従業員組合の了承が規定されているのは、会社の従業員が、経営者側の一方的な事情によって解雇されることを一定限度で制限しようとする趣旨であると解すべきである。そして、Aらが平成7年11月の新体制への移行に伴い部長職を解かれたことは当事者間に争いがないのであるから、その結果、Aらがいずれも従前の管理職としての地位を喪失して一般の従業員と全く同等の法的地位を有するに至ったことが明らかである。そうである以上、Aらに対する本件解雇についても、…
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