アイ・ケイ・ビー事件(東京地判平6・6・21) 退職後に懲戒事由判明、退職金は 不支給は規定の内容による
1995.02.06
【判決日:1994.06.21】
「事由に該当する場合」の明記必要
筆者:弁護士 加茂 善仁(経営法曹会議)
事案の概要
Y会社の退職金規定には「懲戒解雇になった者には退職金を支給しない」、「就業規則に定める懲戒基準に該当する反則が退職の原因となった者に対しては、その者の算定額から50%以内を減額することができる」との定めがあった。Xは、Y会社に10年弱勤務し、営業部長の職にあったが、平成4年11月30日にY会社を退職した。Xからの退職金請求に対し、Y会社は、Xが平成4年12月頃に、Y会社の業務と競合する会社を設立し、Y会社から不当に廉価で商品を買い入れた上転売し利益を得てY会社に損害を与えたのであるから、右Xの行為は、Y会社の懲戒解雇事由を定めた就業規則の「故意又は重大な過失により会社に損害を与えたとき」に該当するものであり、本来であれば懲戒解雇を受け退職金の支払いを受けられなかったはずであるので、たまたま右行為の発覚前に退職したことにより、Y会社に退職金を請求することは許されないとして争った。
判決のポイント
懲戒解雇に伴う退職金の全部又は一部の不支給は、これを退職金規定等に明記してはじめて労働契約の内容となしうると解すべきところ、本件において、Y会社の退職金規定は、…
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平成7年2月6日第2043号10面 掲載