サンデン交通事件(山口地下関支部判平6・3・28) ピケ指導した委員長を譴責処分 違法な実力行使に懲戒も可
ピケで許されるのは平和的説得
筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)
事案の概要
会社と労働組合は、労働協約を締結していなかったが、以前には24時間前までに争議行為の予告通知をする旨の協約があり、これを尊重する労使慣行があった。組合は、春闘時に慣行に従いストを行う旨を会社に予告したが、「但し、会社側による車両分散などストライキ対抗手段がとられた場合、その時点より争議に突入する」旨も併せて通知した。ところが、会社は、スト開始時の1時間半前頃から営業車の分散を実施したため、組合は「但書」に基づき、スト開始時間を繰り上げて決行し、会社による車両分散を阻止するピケッティングを行った。会社は、この争議行為を違法として、組合委員長を譴責処分にしたが、組合委員長と組合は、右処分の無効の確認などを求めて提訴した。
判決のポイント
組合は、但書を適用して本件ストを実施したから、旧協約に違反しないと主張するが、組合と会社間には、未だ但書部分についての合意は成立していなかったというべきである。従って、但書をもとに争議開始予定時間前に実施された本件ストライキは、旧協約に違反する。
しかし、争議行為の予告義務は、争議権の行使自体を制限するものではないから、予告義務に違反して争議行為がなされても、労働協約に違反する点において組合に債務不履行責任を生ずることは別としても、その争議行為自体は違法とはいえず、使用者は、労働者がかかる争議行為をし、または、これに参加したことのみを理由として懲戒処分に付し得ないと解するのが相当である。
使用者は、ストライキの期間中であっても、…
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