倉田学園事件(最判平6・12・20) 職員への無許可ビラ配布に懲戒 違法な処分で不当労働行為 ★
業務に支障なく実質的違反ない
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
Yは、丸亀市と高松市に中学校と高等学校を設置している学校法人で、Z組合は、丸亀校の教職員をもって結成された労働組合である。次の事項について不当労働行為の成否が最高裁まで争われた。
①Yの就業規則には「書面による許可なく、当校内で業務外の掲示をし、若しくは図書又は印刷物等の頒布あるいは貼付をしないこと」と定めていた。Z組合は、団体交渉の席上、機関紙(ビラ)の配布を許可なく認めて欲しい旨Yに求めたが、Yは右規則を理由に拒否した。Z組合は昭和53年5月8日、9日、16日に、Yの許可を得ることなく、始業時間前に、各教員の机上に団体交渉の報告等を内容とするビラを内側に二つ折りにして配布した。Yは、Z組合の執行委員長に対して8日、9日の無許可ビラ配布について、譴責のうち訓告(書面注意)、16日の同行為について、譴責のうち戒告(書面で注意し将来を戒める)に付する懲戒処分をした。
②Z組合は丸亀校内の生徒があまり出入りしない場所に組合掲示板を設置してほしい旨団体交渉で要求したが、Yは右要求を拒否した。Z組合は、高松校の他労組が掲示板の設置を認められた旨聞き知ったことから再度、右設置を団体交渉の席上要求したが、Yは前回同様これを拒否して、具体的事項について協議に入らないまま交渉を打ち切った。
③NはZ組合の組合員であり、丸亀校の数学の授業を担当し、昭和52年度には退職者の後任で中学2年の学級担任となり、昭和53年度も学級担任を予期していたところ、Yより学級担任を外された。
④Z組合員のTに対して、YのK理事長は、4回にわたって退職勧奨を行った。
判決のポイント
① ビラ配布の懲戒処分関係
本件就業規則は、…
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