正興産業事件(浦和地川越支決平6・11・10) 委員長を学歴詐称で懲戒解雇 重大な背信行為にあたる
分かっていたら契約しなかった
筆者:弁護士 畑 守人(経営法曹会議)
事案の概要
債務者は、自動車教習所を経営する会社であり、債権者は、昭和63年3月、債務者に指導員見習として雇用され、その後指導員として勤務していた。債務者は、指導員としては高校以上の学校の卒業者を雇用することとし、新聞等の募集広告でもその旨を就職条件として記載していた。
債権者は、高校を中途退学したのに卒業したと履歴書に記載して、債務者の入社試験を受けた。債務者は入社申込者に対し、卒業証明書等の提出を求めず、また学校照会も行わずに、債権者を指導員見習として採用し、その後指導員としての職務に従事させてきた。
債権者は、労働組合の執行委員長であったが、平成5年3月3日、組合員に対する退職勧告等の措置の撤回を要求して、団体交渉の議題として申し入れる前に、事前の通告も行わず、約2時間の運転教習の業務に従事しないとの怠業を指導し実行した。右怠業に関する事項を調査している過程で、債権者の学歴詐称が判明したため、債務者は、平成6年3月18日、学歴詐称及び違法争議行為等を理由として、債権者を懲戒解雇した。
債権者は、右懲戒解雇が懲戒解雇に該当する事由が存在しないにもかかわらず、組合活動を終息させることを意図して行った不当労働行為であって、解雇権の濫用であり、無効であると主張して、労働契約上の地位の保全と賃金の仮払いを求めて本件仮処分を申請したが、裁判所は申請を却下した。
決定のポイント
自動車教習所は、教習生に自動車運転の技術および知識を習得させて、運転免許を取得させるように指導する公益的な役割を担った施設であり、その職務に直接従事する指導員としては…
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