内山工業事件(岡山地判平6・11・30) 「組合は不同意」委員長が配転拒否 「協議尽した」と解雇認める
組合の了解得られなくてもOK
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
会社と労組間には、「労働協約」と題する文書(本件文書)があり、その34条には組合員の異動につき「組合員の職場、職種転換は本人の意思技能を公正に考慮して行う。但し組合に異議ある場合は組合と協議する。Ⅱ各事務所への転勤又は関係会社への出向については本人の意思技能を公正に考慮して行う。但しこの場合事前に組合と協議のうえ決定する。Ⅲ組合役員を異動する場合は事前に組合と協議決定する」旨規定されているが、本件文書には、会社及び労組の各代表者の署名又は記名押印がない。
会社は、労組の執行委員長ら3名に配転を命じたが、同人らがこれを拒否し不就労を続けたため3名を懲戒解雇し、争いになった。
判決のポイント
会社と労組は、昭和52年11月30日付けで、従前の「労働協約」と題する書面の34条1項及び2項をそれぞれ本件文書34条1項及び2項の文言に改める旨の「労働協約改定に関する協定書」を作成し、会社及び労組の各代表者が記名押印したことが認められるから、本件文書34条1項及び2項については……労働協約としての効力が認められる。
同条3項については……会社と労組間では、昭和63年9月ころまでは、本件文書を労働協約として扱ってきており、その間十数回にわたってその改定に合意してきたこと、組合員の異動についても、本件規定に基づいて、労使間で協議、決定されたうえで実施されてきた。……以上の認定事実によれば、昭和62年当時、組合員の異動について本件規定どおり労使間で協議したうえで決定するとの労使慣行が確立していたと認められる。
会社と労組は、本件配転について、昭和63年9月23日、同月26日、同月27日、同月28日、同月30日の5回にわたり、各1ないし2時間半の経営協議会を開催し、…
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