三井リース事業事件(東京地決平6・11・10) 委員会での弁明機会与えずに解雇 手続の瑕疵ととはいえずOK
就業規則の規定の仕方が重要に
筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)
事案の概要
Y社の就業規則では解雇の一事由として「長期間著しい非能率、組織不適応、労働意欲の欠如等により、会社の業務遂行に支障があり、将来もその職掌に見合う業務を果たすことが期待できないと認められる場合」が、規定されている(25条3号)が、Y社は従業員のXが右の事由に該当するとして解雇する旨の意思表示をした。
これに対し、Xは、解雇事由の存在を否認すると共に、就業規則25条但書には「第3号に該当する場合については、会社はその都度設置する委員会の意見を徴して決定する」との解雇手続が定められているにもかかわらず、Xにも労働組合(社員会)にも委員会で意見を表明する機会が与えられなかったのは重大な手続上の瑕疵であり、解雇は無効であると主張して、東京地方裁判所に対し、地位保全を求める仮処分申請した。
決定のポイント
解雇は雇用契約を終了させる使用者の一方的意思表示であるから、いかなる手続によって解雇するかは、就業規則等に特段の定めがない限り使用者の裁量に委ねられているものと解すべきところ、本件においては、解雇を規定したY社の就業規則25条が、「次の各号の一に該当する場合は、会社は30日前までにその旨を予告するか又は解雇予告手当を支給して職員を解雇することができる。但し、第3号に該当する場合については、会社はその都度設ける委員会の意見を徴して決定する」と定めているが、同就業規則には右委員会の構成員や審理手続等について具体的に定めた規定は存しない。したがって、就業規則25条が定める委員会の構成や審理手続等はY社の裁量に委ねられているものと解すべきであり、その委員会において被解雇者であるXや労働組合の組合員に弁明の機会を与えなければならないものではないというべきである。
本件において、Y社は、…
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