シーアールシー総合研究所事件(名古屋地判7・3・6) 出向嫌っての退職は会社都合扱い? 会社に瑕疵なく任意退職
“出向を口実”の肩叩きではない
筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)
事案の概要
Y社は、長期化する業績不振に対応するため、名古屋支社内のリストラを実施し、Xほか2名の従業員の配転、出向を内示した。Xが内示されたのは、Y社が社内のシステム運用業務等を分離独立させて設立した全額出資の子会社であるC社の大阪支店への出向であった。
しかし、Xは、右出向に応じず退職願を提出して退社したが、Y社より業績悪化を理由として自宅通勤の不可能なC社への出向か退職かの二者択一を迫られ、やむなく退職願を提出したとして、本件退職は退職年金支給規程にいう勧奨退職であるから、既に受領した自己都合による退職金(基本給月額×6.1)と退職勧奨による退職金(基本給月額×13.1)の差額の支払いを求めて提訴した。
Y社は、XにはあくまでC社大阪支店への出向を求めたのであって退職を求めたのではなく、本件退職は、右規程の「会社の勧奨により退職する場合」に該当せず、Xの自己都合による退職であると反論した。
判決のポイント
Y社の就業規則14条には、「会社は従業員に対し他の会社または団体に出向または派遣して勤務をさせることがある」と規定されており、Y社の従業員は、特段の事情がない限り、Y社からの出向命令に従うべき義務を負っているものと認められるところ、前記の認定事実によれば、出向の内示には首肯するに足りる目的と必要性が認められ、手続きについても特に瑕疵の存在を認めるには足りないこと、Xが名古屋市内に自宅を所有するということだけで、名古屋から新幹線で1時間余りの距離にある大阪への赴任を拒否できる理由とはなり得ないというべきであるから、その内示どおりの出向命令が発令された場合には、Xとしてはこれに従うべき義務があったというべきである。
そして、退職年金支給規程にいう「会社の勧奨により退職する場合」とは、…
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