スカンジナビア航空事件(東京地決平7・4・13) 新労働契約申込みに応じない者を解雇 「変更解約告知」を認める
合理化の新たな手法として注目
筆者:弁護士 中山 慈夫(経営法曹会議)
事案の概要
会社は、経営悪化に伴い、日本支社(従業員140名)の抜本的見直しを行い、採算性のある営業部門を中心とする32名程度の組織に縮小して他の業務は外注を原則とする合理化案を発表し、次の提案を行った。
①支社の全従業員に対し、優遇条件を定めて早期退職を募集する②早期退職した従業員の中から新たに縮小した組織に必要な人員に限って再雇用する③再雇用に当たって従来の賃金体系、退職金制度及び労働時間を変更し、新労働条件とする。
しかし、再雇用対象者のうちXら9名は支社からの早期退職・再雇用の申し入れに応募しなかったため解雇となり、この解雇の効力が争われた。
決定のポイント
会社とXら従業員との間における雇用契約は職務および勤務場所が特定されており、また賃金および労働時間などが重要な雇用条件となっていたのであるから、合理化案の実施により各人の職務、勤務場所、賃金および労働時間などの変更を行うためには、これらの点についてXらの同意を得ることが必要であり、これらが得られない以上、一方的にこれらを不利益に変更することはできない。
しかし、労働者の職務、勤務場所、賃金および労働時間などの労働条件の変更が会社業務の運営にとって必要不可欠であり、その必要性が労働条件の変更によって労働者が受ける不利益を上回っていて、労働条件の変更を伴う新契約締結の申込がそれに応じない場合の解雇を正当化するに足りるやむをえないものと認められ、かつ、解雇を回避するための努力が十分につくされているときは、会社は新契約締結の申込に応じない労働者を解雇することができる。
本件では①全面的な人員整理・組織再編が必要不可欠であり、その結果、…
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