三菱重工業事件(福岡高判平7・3・15) 更衣・移動時間は労働時間となるか 労務提供義務と不可分なら ★
1995.07.17
【判決日:1995.03.15】
事前に点検等を行えば労働時間
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
Aらは会社(三菱重工業株式会社)の長崎造船所に勤務する労働者である。会社の就業規則には、始終業基準について、「(1)始業前 始業に間に合うよう更衣などを完了し作業場に到着する。(2)始業 所定の始業時刻に作業場において実作業を開始する」と定められている。ところがAらが、始業時刻前に義務付けられていた作業服、安全保護具などの着装および準備体操・作業場までの到着を始業時刻以降にしたため、会社が始業時刻から準備体操場到着時刻までの時間に対応する賃金をカットした。これに対し、Aらが、作業服、安全保護具などを着装するための更衣時間およびその着装後の準備体操・作業場までの歩行時間は労基法32条1項に定める労働時間であるとして、カット分の賃金の支払いを求め訴訟を提起した。
判決のポイント
本判決は、一審長崎地裁と同様に、次のように述べて、更衣時間および着装後の準備体操、作業場への歩行時間をいずれも労働時間であるとして、会社の主張を退けた。
「就業規則の始業時刻前の作業服・安全保護具などの着装義務、労働安全衛生法26条に定める労働災害防止のための労働者の遵守義務に対応するものと解されるが」、「作業服・安全保護具などの着装は、Aらが自からの遵守義務を履行するのはもちろん、それと同時に、…
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平成7年7月17日第2065号10面 掲載