飯田労基署長(信菱電機)事件(長野地判平7・3・2) 脳血管系疾患による死亡が業務上に 過重負荷が“憎悪”の要
法的評価として因果関係認める
筆者:弁護士 畑 守人(経営法曹会議)
事案の概要
昭和55年に訴外会社に入社した原告長男Aは、昭和58年12月14日、工場において、午前8時25分から午後5時まで通常業務に従事した後、時間外労働としてプリント基板の不良品検査及び不足部品の挿入作業、トラックへの製品積込作業を行い、午後9時45分頃、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血で倒れ、午後10時29分死亡した。Aの入社後の所定時間外労働は月平均60.5時間乃至149.6時間で製造業平均の5~9倍、総労働時間も約1.4~1.9倍あり、深夜業、休日出勤も多く、連続出勤も最長で34日間あった。
原告はこのため、被告に対し労災保険法の遺族補償給付及び葬祭料の支給を請求したところ、被告は、業務上の事由による死亡とは認められないとして不支給の決定をした。そこで原告は、労働者災害補償保険審査官に対し審査請求をしたが、棄却され、更に、再審査請求をした労働保険審査会も請求を棄却する旨裁決したため、被告の不支給決定の取り消しを求めて本訴を提起した。
判決は、Aの担当業務が基礎疾患を有するAにとって過重な負荷となり、その基礎疾患を自然的経過を越えて増悪させて発症を早め、通常の基礎疾患発症の自然的経過を越えて死亡の結果を生じさせたものであり、Aの死亡には業務起因性が認められるとして不支給決定を取り消した。
判決のポイント
一、労働者が疾病により死亡した場合に業務起因性があるというためには、…
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