小暮釦製作所事件(東京地判平6・11・15) 団交決裂、労組が賞与請求権を主張 就業規則等の内容で変る
具体的金額、支給日確定が要件
筆者:弁護士 安西 愈
事案の概要
本件は、賞与請求権が問題となった事案である。会社の就業規則である「服務規定」第27条では、「賞与は、年2回、7月及び12月に左の通り支給する。但し、支給額は、その勤務成績、勤続年数及び会社の業務成績等により増減することがある」としたうえで、「7月・基本給の0.5カ月分、12月・基本給の1カ月分」と規定している。
また、本件原告らが所属する組合分会と「協定書」を締結し、その第一項で「会社は、会社で働く労働者の雇用・労働条件については、組合と協議、合意してから決定する」と定めている。
しかし、平成4年度夏期手当に関しては労使間でいろいろな経緯があって合意が得られなかったため、原告らが主位的請求として、被告会社においては賞与額は概ね前年度実績を下回らない旨の労働慣行が存在するとして、前年同額の賞与の支払いを求め、予備的請求として、会社の就業規則によれば少なくとも基本給の0.5カ月分に相当する夏期賞与請求求権があるとして請求に及んだものである。
判決のポイント
裁判所は、次のように判示し、原告らの本件請求を棄却した。
賞与は、労働基準法11条所定の労働の対価としての広義の賃金に該当するものであるが、その対象期間中の企業の営業実績や労働者の能率等諸般の事情により支給の有無及びその額が変動する性質のものであるから、具体的な賞与請求権は、就業規則等において具体的な支給額又はその算出基準が定められている場合を除き、特段の事情がない限り、賞与に関する労使双方の合意によってはじめて発生すると解するのが相当である。
これを本件についてみるに、…
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