高知県観光事件(最判平7・4・14) 少数組合と36協定結ばず残業を禁止 不当労働行為に該当しない ★
1995.09.11
【判決日:1995.04.14】
形式的団交など特段の事情なければ
筆者:弁護士 中山 慈夫(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、複数組合併存下の企業における不当労働行為問題である。
会社は、36協定を締結しないでタクシー運転手に時間外労働を行わせ、時間外・深夜労働分も給与(歩合給)に含まれるという趣旨で時間外・深夜割増賃金を支払っていなかったため、労働基準監督署から是正勧告・指導を受けた。そこで、会社は過半数従業員を組織するA組合との間で勤務シフトの変更と時間外労働について36協定を締結し、賃金計算については従来の歩合給の掛率(水揚高の42%~46%)を数%下げ(38.5%~40.5%)、これを基礎に時間外・深夜割増賃金を支払うことで合意した。
しかし、少数派のB組合は、36協定締結には異論はなかったが、右の賃金計算方法の変更には反対であった。このため会社は、①B組合と36協定を締結せずB組合員の時間外労働を禁止し②これに違反したB組合員らに対し出勤停止・減給の懲戒処分を行った。これが労働組合法7条1号・3号の不当労働行為か否か争われたものである。初審高知地労委、一審・二審の裁判所は①・②をいずれも不当労働行為と判断したが、最高裁は①を不当労働行為に該当しないと判断した。ここでは①についてみる。
判決のポイント
同一企業内に複数組合が併存する場合、両組合と交渉の結果、…
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平成7年9月11日第2072号10面 掲載